水質汚染の原因は?私たちの取り組み次第で環境問題を改善できる
水質汚染は、産業排水や生活排水によって引き起こされ、環境問題の中でも重要な課題の1つです。
水は私たちの生活において欠かせない存在であるため、他人事では済まされません。水質汚染を改善するためには「私たち一人ひとりの行動」が鍵となります。
そのため、水質汚染の原因を知って私たちには何ができるのかを考え、できる範囲内で行動に移していきましょう。
水質汚染の原因と現状
水質汚染とは、私たちの活動によって河川や海洋の水質が汚染(悪化)することです。人間の活動が原因ですが、具体的には「産業排水」「生活排水」「地球温暖化」が影響しています。
それぞれの原因と現状を把握し今、世界では何が起こっているのか見ていきましょう。
産業排水
産業排水とは、工場や農業から排出される汚水のこといいます。直接、河川や海に流されたり、排水が土に染み込み地下水となってしまったりすることが原因で水質汚染が広がっています。
産業排水には有機物質が多く含まれており、川や海に生息する生物だけでなく私たち人間にも悪影響を与える存在です。
水質汚染により、人体に大きな影響を与えた代表例としては「イタイイタイ病」「水俣病」などがあります。
たとえば、水俣病は有毒な水銀が海に流れ、海の魚が汚染されました。その汚染された魚を食べた人間も影響を受け、感覚障害や運動失調などの症状を引き起こしました。
このような過去の悲劇を繰り返さないために、現在では水をきれいにしてから排水するよう厳しく制限されています。
1970年の水質汚濁防止法により厳しく制限され、産業排水による水質汚染は減りつつあるのが現状です。
生活排水
生活排水とは、お風呂や洗濯、トイレなど私たちの日常生活から出る排水をいいます。
農林水産省が行っている「汚水処理人口普及状況」の調査によれば、令和4年度末における汚水処理人口普及率は92.9%です。
いまだに約880万人が汚水処理施設を利用できていない状況であり、多くの生活排水が未処理のまま河川に流されていることがわかります。
では、私たちの日常生活でどれほど水が汚染されているのか、汚染度の高い生活排水の一例を見ていきましょう。
生活排水の種類 | BOD(g) | 魚がすめる水質にするために必要な水の量 (バスタブ300Lが何杯分?) |
マヨネーズ大さじ1杯(15ml) | 20 | 13 |
みそ汁お椀1杯(180ml) | 7 | 4.7 |
シャンプー1回分(4.5ml) | 1 | 0.67 |
台所用洗剤 | 1 | 0.67 |
引用元:環境省 生活排水読本
※BODとは、水の汚れを表す指標で微生物が汚れた水を分解するために必要な酸素量のことをいいます。BODの数値が大きいほど環境への負荷も大きいです。
1990年の水質汚濁防止法改正で生活排水対策が加わりましたが、規制が厳しく有効な対策を見いだせていないのが現状です。
地球温暖化
水を直接汚染する「産業排水」や「生活排水」だけでなく、地球温暖化も水質汚染の原因の1つです。
地球温暖化によって引き起こされる「酸性雨」や「水温の上昇」などにより水質は汚染されます。
・酸性雨
酸性雨は、二酸化炭素を多く含んだ雨です。二酸化炭素が増加すると酸性の度合いが高くなり、酸性雨になります。 水域が酸性になると、魚類や藻類、貝類、プランクトンの生態系を破壊するため水質汚染につながります。 |
・水温の上昇
地球温暖化によって水温が上昇すると、植物プランクトンが増えてアオコが発生しやすくなります。 アオコとは、大量発生した植物プランクトンが水中の酸素を消費し、生息する生物に必要な酸素が足りず窒息死する現象です。生態系の悪化は水質汚染にもつながります。 |
水質汚染がもたらす影響
水質汚染は川や海に生息する生物だけでなく、私たち人間や地球に悪影響を及ぼします。
生物に与える影響
水質汚染は生物に与える影響が大きく、絶滅危惧種に指定される生物も増えています。
たとえば、私たちにもなじみ深い「ニホンウナギ」は絶滅危惧種IB類に指定されるほど、個体数が減りこのままではいずれ絶滅してしまうでしょう。
また、全世界の海洋魚種資源の割合は、1974年から2013年までで21%も低下しています。
人間に与える影響
日本は比較的水がきれいであるためイメージがつきにくいですが、世界に目を向けると水道設備や浄化設備が整っておらず、不衛生な水を摂取している人が多くいるのが現状です。
世界では、6億6,300万人もの人が安全できれいな水を飲むことができず、毎日800人の子どもが不衛生な水により命を落としています。
水質汚染によって不衛生な水が広がり、健康被害や感染症などを引き起こす原因になるのです。
地球に与える影響
水質汚染が地球に与える影響もさまざまです。水質汚染が広がると、安全に利用できる水資源は貴重な存在となります。
日本は隣接している国がありませんが、世界ではこの「貴重な水資源」をめぐって水紛争が起きています。
水質汚染が広がると一層、水紛争が増えてしまうでしょう。
水質汚染を改善するためにわたしたちにできること
水質汚染は私たちの行動によって改善していくことができます。一人ひとりの行動も大切ですが、規模の大きい企業や国が取り組むことで大きな効果が期待できます。
日本が行った対策
日本が行った主な対策は、1970年に定められた「水質汚濁防止法」です。工場の排水基準を定め、基準に満たない事業所には厳しく罰することで水質汚染を対策しています。
また都道府県ごとに、条例を制定することで全国の基準よりもさらに厳しく取り締まることができるようになりました。
その他の対策としては、水循環基本法により8月1日を「水の日」、8月1~7日を「水の週間」と制定したことです。
ポケットモンスターのシャワーズを応援大使にするなど、多くの人に関心を持ってもらえるよう取り組みを行っています。
企業ができる対策方法
企業ができる対策としては、水の使用量を減らしたり、国が定めた排水基準より厳しく設定したりすることです。
たとえば、クボタグループは水使用量の削減に取り組み、2022年度には対策を実施しなかった場合と比べて約9,800m3を削減しました。
その他にも、キッコーマンは、法よりも厳しい自主基準を設けたり、本社ビルの中庭に雨水を溜める池を配置したりといった活動を行っています。
企業が水質汚染の改善に取り組むことで、従業員も水質汚染に関する知識や改善に興味を持ちやすくなるため、積極的に取り組みましょう。
個人ができる対策方法
個人ができる対策法は非常に多くあるため以下のような取り組みを意識してください。
・食器やトレーは汚れたまま洗わず新聞紙や布でふき取る ・お風呂の水を洗濯や花の水やりなど再利用する ・洗剤やシャンプー、リンスーを過剰に使わず水洗いを意識する ・プラスチック製品をなるべく使わない ・海岸や河川のゴミを拾う ・水質汚染について学ぶ |
一人ひとりが意識して上記のような取り組みを行うことで、少しずつ水質が改善していきます。
まとめ
水質汚染と聞くと「水」のイメージがありますが、「地球温暖化」も水質汚染の原因の1つです。そのため、水質の改善が難しい場合は、地球温暖化を改善する取り組みを行いましょう。
私たちシナネンは「あかりの森プロジェクト」を立ち上げ、環境保全活動を行っています。自然エネルギー100%の電気を使用し、二酸化炭素の削減を行っているため水質汚染の改善にも効果的です。
水質汚染だけでなく、海や陸の自然保護・生態系保護にもつながりますので、ぜひ一度ご検討ください。